2010年11月30日火曜日

文脈日記(職能訓練)

気がつけば11月の最終日だ。龍馬伝は終わってしまった。明日からは師走だ。
脱藩者にも年末年始がやってくる。
そんなわけで、大慌てでブログを更新しよう。一ヶ月以上、ブランクが空いてしまった。

この間、僕は何をやっていたのか。一言でいえば職能訓練をやっている。

脱藩をするとき、僕は以下のミッション・ステートメントをした。

コミュニケーション・デザインのボランティアをします。

釣りの合間に畑仕事やります。

調理師免許とります。

今は、この3つのミッションを実現するための職能訓練に時間をとられているのですね。

コミュニケーションの仕事は長い間、やってきた。でも仕事としてのそれと、世の中と繋がるためのコミュニケーションは少しちがう。

脱藩してタテのコミュニケーションからは完全に脱出できた。そしてヨコに繋がっていく縁脈は確実に拡大再生産している。
会社をやめると孤立する、という説は信じられない。

ツイッターで繋がった皆さんとリアルに会い始めた。初めて会った瞬間からその人のことを分かっているコミュニケーションは新鮮だ。初対面のような気がしない。

年の差は関係ない。名刺も関係ない。

会社員時代は初対面の相手との間合いを図るのに時間がかかった。クライアントを頂点とするタテ構造は複雑だから。
でもネットの性善説に基づく間合いの取り方はシンプルなようだ。

誠実であること。相手の言うことを傾聴すること。

これはツイッター・オフ・ミーティングに限らず、新しい出会いでの大原則になりそうだ。

僕は今、さまざまな新しい出会いをしながら、この職能訓練を積み重ねている。
まだまだやな、という妻の声が聞こえそうだが。

コミュニケーションのスキルを改革しつつ、新しい出会いの場を構築することも始めた。

僕は小豆島に誰も住んでいない家を持っている。

瀬戸内国際芸術祭では「小豆島の家」というタイトルのアートがあった。竹で建築された涼やかな家だった。

僕の「小豆島の家」は骨太ではあるが、まだ寝泊まりすらできない。まずは上下水道の整備からだ。ずっと使っていた井戸水は水質検査の結果、飲用不可だった。

ツイッターで繋がった小豆島在住の仲間たちの助けを借りながら、少しずつ基本インフラの整備をしていこうと思う。
それから、家のリフォームだ。こちらは協創LLPの縁脈が頼りになりそうだ。

まだまだ先行きは不透明だが、前には進んでいる、と思う。

実は、もうひとつ、坂出にも誰も住んでいない僕の実家がある。こちらは妻の奮闘努力で寝泊まりができるようになった。現住所の箕面は大好きなのだが、諸事情で坂出滞在も多くなりそうだ。

次は畑仕事の職能訓練だ。

小豆島の家の周りには、けっこう広い土地がある。ところが、ここはセイタカアワダチソウを大将とする草たちの縄張りになっていた。彼らの生命力には恐れ入る。

畑仕事の基礎は草刈りだ。小豆島の家で畑をするのは時期尚早だが草刈りの訓練には最適の場所だった。親戚のおじさんにご指導を乞いながら、生まれてはじめて草刈り機のエンジンを回した。

これは快感ですね。フルスロットルにして草どもをなぎ倒す。暴れるハンドルを必死で支える。青臭い草の匂いに包まれる。前へ前へと進んでいく。

生まれてはじめての経験は楽しい。楽ではないが楽しい。

この草刈り体験の前に、僕は箕面のマイファームも始めていた。マイファームというのは休耕地を利用して、野菜作りの畑を都会のそばで持続していくプロジェクトだ。「自産自消」社会の構築を目的としている。

自慢じゃないが、畑仕事も生まれてはじめてだ。D社時代に、エコとかサステナビリティとかに関わったが、自分で手を動かして作物を育てたことはなかった。

野菜の芽って可愛い。話には聞いていたが、そのとおりだった。

箕面マイファームでの職能訓練では管理人さんが頼りだ。畑仕事に関しても膨大な情報がネット上にあふれている。でも、この分野では謙虚に一から管理人さんの話を傾聴しようと思う。
畑情報の大洪水に溺れたくはないので。
畑仕事の職能訓練は時間の経過とともに、身についていくと思うのだが。

さて、問題は3つめのミッションだ。

調理師免許取ります。

すみません、この件に関しては大嘘をつきました。ほらふきと笑ってください。
僕の性格では、調理師学校に1年間、通学して学生をやるのは無理と妻に認定されました。

よって調理師への道は諦めた。
以上終わり、ではあまりに無責任だし、本当に料理には興味があるので違う道を歩み始めている。

送別会でいただいた包丁は決して無駄にはしません。

今は調理師学校ではなく月に3回、料理教室に通い始めている。この職能訓練も楽しい。
マイ計量カップも買った。まだ包丁で指は切っていない。

コミュニケーションのスキルを改善して、新しい生活拠点をつくり、自産自消した野菜と魚を料理できるようになること。

これで《自立》のためのコンテキストは一応、つながるはずだ。
小豆島や坂出で、妻なしでも暮らしていけるはずだ。

でもまだ問題はある。元々、曲がりなりにも持っていた釣りのスキルを磨く時間がまったくないのである。

釣りの合間に畑仕事やります、の釣りにまったく行くことができない。
もちろん鮎釣りはオフシーズンだ。しかし僕に鮎釣りを教えてくれた師匠は、今や海釣りでも漁師並みの腕前になったと聞いている。そちらの教えも請いたいのだが。
この職能訓練も楽しそうだ。

よみかきそろばんとITスキルだけでは、人は生きていけない。

頭の中だけでのサステナブル・ライフからいつ脱出できるのかは、まだ分からない。
一歩一歩、できることからやっていく日々が続く。